2026年8月29日
2026年8月29日
クラウドサーバーの種類と選び方(AWS/GCP/Azure):サービスの型から決める
AWS・Google Cloud(GCP)・Azure を比べるときは、事業者を先に選ぶより「仮想マシン・PaaS・コンテナ・サーバーレスのどの型で動かすか」を先に決めると判断しやすくなります。3社とも同じ型のサービスをそろえており、差が出るのは周辺の機能、組織で既に使っている環境、担当者の慣れだからです。この記事では、クラウドのサービスの種類を整理し、WordPress や Web アプリを載せる前提で選び方の手順を説明します。
クラウドサービスの4つの型
1. 仮想マシン(IaaS)
OS から自分で管理する仮想サーバーです。AWS の Amazon EC2、Google Cloud の Compute Engine、Azure の Azure Virtual Machines が該当します。VPS と同じ感覚で扱え、WordPress の一般的な構成(Web サーバー+PHP+MySQL)をそのまま載せられます。自由度が高い反面、OS の更新やバックアップ、セキュリティ設定は利用者の責任です。
AWS には、仮想マシンとネットワーク、固定 IP などをまとめた簡易版の Amazon Lightsail もあり、料金体系も分かりやすく作られています。クラウドに慣れていない段階で1台構成の WordPress を動かすなら、最初の候補になります。
2. PaaS(アプリの実行環境)
OS の管理を事業者に任せ、アプリのコードを載せるだけで動く環境です。AWS Elastic Beanstalk、Google App Engine、Azure App Service などがあります。Azure では App Service 上で WordPress を動かす構成も提供されています。保守の手間は減りますが、実行環境の制約(書き込めるディレクトリ、使えるソフト)を理解しておく必要があります。
3. コンテナ
Docker などのコンテナイメージを動かすサービスです。サーバーを意識せずにコンテナを動かせるものとして Amazon ECS(AWS Fargate)、Google Cloud Run、Azure Container Apps があり、より細かく制御したい場合は Kubernetes のマネージドサービス(Amazon EKS、Google Kubernetes Engine、Azure Kubernetes Service)を使います。
4. サーバーレス関数
イベントやリクエストのたびに短いコードを実行するサービスです。AWS Lambda、Cloud Run functions(旧 Cloud Functions)、Azure Functions が該当します。WordPress 本体を載せる用途には向きませんが、画像処理やフォームの後処理、定期実行のバッチなどを切り出すのに便利です。
周辺のマネージドサービス
どの型を選んでも、データベースやファイル置き場はマネージドサービスに任せられます。MySQL なら Amazon RDS(Aurora を含む)、Cloud SQL、Azure Database for MySQL のフレキシブル サーバー、ファイルや画像なら Amazon S3、Cloud Storage、Azure Blob Storage です。サービス名や提供形態は見直されることがあるため、各社の公式ドキュメントで最新の名称を確認してください(2026年10月現在)。
WordPressを載せるときに型で何が変わるか
WordPress は、データベースとアップロードファイル(wp-content/uploads)という「状態」を持つアプリです。この性質が、どの型を選ぶかに大きく影響します。
- 仮想マシン1台:最も単純で、手順も情報も多い。サーバーが1台なので、停止時の影響とバックアップの設計は自分で考える
- 仮想マシン複数台+ロードバランサー:DB をマネージドサービスに分け、アップロードファイルを共有ストレージやオブジェクトストレージに逃がす必要がある
- コンテナ・PaaS:インスタンスが入れ替わるとローカルのファイルが消えるため、メディアのオフロード、プラグインやテーマの更新方法(イメージに含めて再デプロイする等)を設計し直す必要がある
管理画面からプラグインを追加・更新する運用を続けたいなら、仮想マシン型がもっとも素直です。コンテナやサーバーレスは、ヘッドレス構成のフロントエンドや API、静的サイトの配信などと組み合わせると利点が出やすくなります。
3社の違いが出やすいポイント
サービスの型はほぼ同じでも、選定で差になりやすい点があります。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 組織の既存環境 | 社内で Microsoft 365 や Entra ID を使っているなら Azure、Google Workspace や BigQuery を使っているなら Google Cloud、と既存の認証や契約に合わせると管理が楽になる |
| 担当者のスキル | 誰が設計・運用するか。慣れている事業者を選ぶほうが設定ミスを減らせる |
| リージョン | 3社とも東京と大阪にリージョンがある。使いたいサービスがそのリージョンで提供されているかは個別に確認する |
| 費用の発生の仕方 | 時間課金に加え、外向きのデータ転送、ストレージ、ログ保存などで費用が発生する |
| サポート | 日本語サポートの範囲、有償サポートの要否 |
費用は構成と使い方で大きく変わるため、ここでは比べません。各社とも料金計算ツールを公開しているので、想定する構成と転送量を入れて見積もってください。無料枠や新規向けの特典も用意されていますが、条件はたびたび変わります。
選び方の手順
- 要件を書き出す:想定アクセス数、停止が許される時間、管理画面での更新の有無、必要なソフト、扱う個人情報の有無
- 型を決める:管理画面運用が中心なら仮想マシン(または Lightsail のような簡易版)、アプリを頻繁にデプロイするならコンテナや PaaS
- 事業者を決める:組織の既存環境、担当者のスキル、使いたい周辺サービスで選ぶ
- 小さく試す:検証用のプロジェクト(アカウント)で最小構成を作り、デプロイ・バックアップ・復元まで一度通してみる
- 費用の上限を決める:予算アラート(AWS Budgets、Google Cloud の予算アラート、Azure Cost Management など)を最初に設定する
手順5は後回しにされがちですが、設定ミスで想定外の請求が発生するのを防ぐ大事な仕組みです。あわせて、ルートアカウント(管理者アカウント)に多要素認証を設定し、日常の作業は権限を絞ったユーザーで行うようにしてください。
クラウドを選ばないほうがよい場合
サイトが1つで、アクセスの増減も小さく、管理担当者が少ないなら、国内の共有ホスティングや VPS のほうが費用も手間も読みやすいことが多くあります。クラウドは構成の自由度と拡張性が強みですが、その分だけ設計・費用管理・セキュリティ設定の責任も増えます。「クラウドにすれば速くなる」「安くなる」とは限らないので、要件に照らして判断してください。
まとめ
- クラウドのサービスは仮想マシン・PaaS・コンテナ・サーバーレスの4つの型に分けて考える
- 3社とも同じ型のサービスをそろえており、違いは既存環境、担当者のスキル、周辺サービスに出やすい
- WordPress は状態を持つアプリなので、管理画面で運用するなら仮想マシン型が素直。複数台やコンテナにするならメディアと DB の分離が要る
- 費用は料金計算ツールで見積もり、予算アラートと多要素認証は最初に設定する
- 小規模なサイトなら、共有ホスティングや VPS のほうが合う場合も多い