2026年6月9日
2026年6月9日
DNSViz を使った DNS レコードの比較確認手順|変更の前後、新旧の DNS 事業者、正常なドメインと並べて違いを見つける
DNSViz で比較確認をするときは、「何と何を比べるか」を先に決め、同じ条件で解析した結果を2つ並べて見ます。よく使う比べ方は、DNS の変更や DNSSEC の導入の前後、移転前の新旧の DNS 事業者、問題のあるドメインと正常なドメインの3つです。Web 版(dnsviz.net)では過去の解析結果を選んで見比べられ、コマンドライン版では解析結果を JSON で保存して差分を取れます。この記事では、それぞれの比べ方の手順と、違いが見つかったときの読み方を説明します。
1回の解析の中で権威サーバー同士や親子の NS を比べる方法、グラフの図形や色の意味は別の記事で扱っているため、ここでは「2つの解析結果を比べて変化や原因を見つける」ことに絞ります。
比べる前にそろえる条件
2つの結果を比べるときは、違いが「DNS の状態の違い」から来ているのか、「解析の条件の違い」から来ているのかを区別できるようにしておきます。次の点をそろえます。
- 調べる名前:ドメイン名そのものと
wwwの下では、問い合わせる種別も結果も違います。同じ名前どうしで比べます。 - 問い合わせる種別:解析の詳細設定で追加の種別を選んだなら、比べる側でも同じ種別を選びます。
- 解析の方式:権威サーバーに直接聞く方式か、キャッシュサーバーを通す方式かをそろえます。
- 解析した場所:Web 版はインターネット側から、コマンドライン版は手元の環境から問い合わせます。IPv6 が使えない環境で解析すると、IPv6 のサーバーには届かない結果になるため、場所が違う結果どうしは慎重に比べます。
比べ方1:変更の前後を比べる
DNS のレコードの変更、権威サーバーの追加、DNSSEC の導入や鍵の更新のような作業では、作業の前と後に1回ずつ解析しておくと、作業で何が変わったかを確かめられます。
Web 版での手順
- 作業の前に、対象の名前を dnsviz.net で解析し、解析日時を控えます。
- 作業のあと、同じ名前を新しく解析します。過去の結果が表示された場合は、日時を見て新しい解析であることを確かめます。
- 名前のページでは、過去の解析結果を日時で選んで表示できます(2026年10月現在)。画面の表記は更新で変わることがあります。作業前と作業後の結果を、ブラウザーの別のタブで開いて並べます。
並べたら、まずエラーと警告の一覧を比べます。作業後に新しく増えたエラーや警告が、作業による影響の候補です。次に、グラフの形(鍵や DS の数、矢印のつながり)と、応答の一覧での値・TTL を比べます。
コマンドライン版での手順
コマンドライン版では、結果をファイルに保存して差分を取れます。社内専用の名前や、結果を公開したくない名前もこちらで調べます。
# 作業前:解析結果を保存する
dnsviz probe -A -a . -p example.com > before.json
# 作業後:同じ条件で解析する
dnsviz probe -A -a . -p example.com > after.json
# エラーと警告を JSON で取り出して比べる
dnsviz grok -r before.json > before-grok.json
dnsviz grok -r after.json > after-grok.json
diff before-grok.json after-grok.json
# 文字の表示どうしを比べる
diff <(dnsviz print -r before.json) <(dnsviz print -r after.json)
-A は権威サーバーに直接問い合わせる指定、-a . はルートから解析する指定、-p は JSON を読みやすく整形する指定です。差分には署名の有効期限のように、作業と関係なく変わる値も含まれます。期限の値の違いはひとまず脇に置き、エラーや警告の増減、鍵や DS、NS の増減を中心に読みます。オプションの細部は版で変わることがあるため、dnsviz help probe の表示を優先してください。
比べ方2:新旧の DNS 事業者を比べる
DNS 事業者を移すときは、親ゾーン(レジストラ)の NS を切り替える前に、新しい事業者の権威サーバーが今の事業者と同じ答えを返すかを確かめておくと、切り替え後の事故を減らせます。
DNSViz には、親ゾーンにまだ登録していない権威サーバーを指定して解析する仕組みがあります。Web 版では解析の詳細設定の中に委任を明示して試す欄があり、コマンドライン版では -x で「このゾーンの権威サーバーはこれ」と指定できます。
# 現在の事業者(親ゾーンの登録どおり)で解析する
dnsviz probe -A -a . -p example.com > current.json
# 新しい事業者の権威サーバーを明示して解析する(名前とアドレスは例)
dnsviz probe -A -a . -p \
-x example.com:ns1.new-dns.example=198.51.100.53,ns2.new-dns.example=198.51.100.54 \
example.com > new.json
-x の書き方は版によって異なることがあるので、dnsviz help probe と公式リポジトリの説明(事前の検証に関する節)で確かめてから使います。
2つの結果では、次の点を比べます。
- 応答の一覧の値:A・AAAA・MX・TXT・CAA など、サイトとメールに関わるレコードの値がそろっているか。移し忘れたレコードは、新しい事業者側だけ「存在しない」結果になります。
- TTL:事業者によって既定の TTL が違うことがあります。意図しない長さになっていないかを見ます。
- ゾーンの中の NS と SOA:新しい事業者の権威サーバーが返す NS が、新しい事業者のサーバー名になっているか。
- DNSSEC:現在のドメインで DNSSEC を使っている場合、新しい事業者の鍵が、親ゾーンに登録済みの DS とつながらないことがあります。そのまま NS を切り替えると、検証を行うキャッシュサーバーで名前が引けなくなるおそれがあります。DS を外してから移す、両方の事業者の鍵を並べて公開できるか確かめるなど、事業者の案内に沿って順番を決めます。
切り替える前には、現在の事業者の管理画面でゾーンを書き出すか、すべてのレコードを控えて、元に戻せるようにしておきます。
比べ方3:正常なドメインと比べる
同じ DNS 事業者で管理している別のドメインが正常に動いている場合、問題のあるドメインと並べて解析すると、違いが手がかりになります。
- 正常なドメインにも同じエラーが出ているなら、事業者側の仕組みや一時的な障害の可能性があります。
- 問題のあるドメインにだけエラーが出ているなら、そのドメインの設定(レコードの内容、DS の登録、親ゾーンの NS)を疑います。
比べる相手は、自分が管理しているドメインにします。他人のドメインの結果は、相手の事情で変わるため比べる基準になりにくく、繰り返し解析するのも避けます。
違いが見つかったときの読み方
比べて違いが見つかったら、次の順で確かめます。
- 違いはエラーか、警告か:エラーは名前解決の失敗につながる可能性が高いもの、警告は今は動いていても将来の失敗や一部の環境での失敗につながりうるものです。エラーを先に扱います。
- 違いはどのサーバー、どの通信方式で起きているか:特定の権威サーバーや、IPv6・TCP だけで起きている違いは、そのサーバーやネットワークの問題であることが多いです。
- 違いは作業の結果として想定どおりか:鍵の更新中に鍵が一時的に2つ並ぶ、のように、手順上は正常な違いもあります。作業の手順書と照らし合わせます。
修正したら、同じ条件でもう一度解析し、違いが解消したことを確かめます。
まとめ
- DNSViz の比較確認は、変更の前後、新旧の DNS 事業者、正常なドメインとの3通りが基本です。名前・種別・解析の方式・解析した場所をそろえて比べます。
- Web 版では過去の解析結果を日時で選んで並べ、コマンドライン版では JSON を保存して
grokやprintの出力の差分を取ります。 - 移転の前には、新しい事業者の権威サーバーを明示して解析し、レコードの値・TTL・NS・DNSSEC のつながりを今の事業者と比べます。
- 違いは、エラーか警告か、どのサーバー・方式で起きたか、作業上想定どおりかの順に読みます。