2026年8月30日
2026年8月30日
ドメインのリデンプション(Redemption Grace Period)とは|仕組み・期間・できること
リデンプション(Redemption Grace Period, RGP)は、削除処理に入ったドメインを元の登録者が取り戻せるように設けられた猶予期間です。gTLD では一般に30日間で、この間はサイトもメールも止まりますが、契約していたレジストラを通じて「復旧(restore)」を申し込めます。この記事では、リデンプションがライフサイクルのどこに位置し、状態表示をどう読み、何ができて何ができないのかを仕組みから解説します。復旧作業の具体的な手順よりも、「いま何が起きているのか」を理解して判断できるようになることが目的です。
リデンプションが設けられている理由
かつては、更新を忘れたドメインがそのまま削除され、すぐ第三者に取得されてしまう事故が多くありました。そこで ICANN と gTLD のレジストリは、削除の手前に「元の登録者だけが取り戻せる期間」を置く仕組みを整えました。これがリデンプションです。
ポイントは、リデンプションがレジストリ(.com なら Verisign など TLD の管理者)側の状態だということです。レジストラ(お名前.com や Cloudflare などの販売・管理窓口)がドメインを削除するとレジストリ上でこの状態に入り、レジストラから復旧を申請すると元に戻ります。
ライフサイクルの中の位置
gTLD の一般的な流れは次のとおりです。
- 登録中: 通常どおり利用できる
- 有効期限切れ(更新猶予): レジストラごとに長さが異なる猶予。多くの場合、通常に近い条件で更新できる
- リデンプション(redemptionPeriod): 一般に30日。復旧費用を払えば元の登録者が取り戻せる
- 削除保留(pendingDelete): 一般に5日。誰も復旧・登録できない
- 開放: 一般の新規登録が可能になる
期限切れからではなく、登録者やレジストラが能動的に削除した場合も、登録直後の短い猶予期間を除けば3の段階に入ります。つまりリデンプションは「期限切れの延長」ではなく「削除の取り消し期間」と捉えると分かりやすくなります。
状態表示の読み方
レジストリ上の状態は、EPP(レジストリとレジストラ間の通信規格)のステータスコードで表されます。リデンプションに関わるものは RFC 3915 で定義されています。
redemptionPeriod: リデンプション期間中pendingRestore: 復旧の申請が受け付けられ、処理中pendingDelete: 削除保留。この段階では復旧できないautoRenewPeriod: 期限後に自動更新された直後の猶予(リデンプションではない)
gTLD では2025年以降、登録情報は RDAP で提供されるのが正式になっており、RDAP では redemption period pending delete のように空白区切りの表記になります。
# RDAP(rdap.org が TLD ごとのサーバーへ案内する)
curl -sL https://rdap.org/domain/example.com | jq '.status'
# WHOIS が使える環境なら
whois example.com | grep -i 'status'
似た表示で混同しやすいのが clientHold と serverHold です。これらは「DNS に載せない」という停止状態で、登録者情報の確認メールに応答していない、支払いに問題がある、レジストリやレジストラが調査中である、といった理由で付きます。リデンプションとは解除の方法がまったく異なるため、まずどの状態なのかを区別してください。
リデンプション期間中にできること・できないこと
できないこと
- サイトの表示とメールの送受信(ドメインがゾーンから外れるため)
- 通常の更新手続き
- 他のレジストラへの移管
- 第三者による取得
できること
- 契約していたレジストラを通じた復旧の申し込み
他人に取られる心配はまだありませんが、使えない状態が続くこと自体が損失です。メールは送信元サーバーが一定期間再送を試みたあとエラーで返すため、取引先から「メールが届かない」と連絡が来て初めて気付くこともあります。
復旧(restore)の仕組みと費用が高い理由
復旧は、レジストラがレジストリに復旧要求を送り、その後に復旧報告を提出する2段階で行われます。RFC 3915 の仕組みでは、要求後に pendingRestore となり、所定の期間内に報告が提出されなければ redemptionPeriod に戻ります。登録者がこの通信を直接行うことはなく、すべてレジストラの作業です。
復旧には、レジストリに支払う復旧手数料、レジストラの手数料、そして多くの場合1年分の更新料が含まれます。そのため通常の更新よりかなり高額になるのが一般的です。具体的な金額はレジストラごとに大きく異なるため、契約先の料金表を確認してください。また、レジストラによってはリデンプションの途中で受付を締め切る、あるいは復旧そのものに対応していないことがあります。
TLD による違い
ここまでの説明は .com などの gTLD を前提にしています(2026年10月現在)。
- 新しい gTLD の中には、期間や扱いが異なるレジストリがあります
- ccTLD(国別 TLD)は各国のレジストリが独自の規則を定めており、リデンプションに相当する期間が無い、または名称や期間が異なる場合があります
- .jp は JPRS の規則で運用されており、gTLD の「30日のリデンプション」がそのまま当てはまるわけではありません
自分のドメインの TLD について、レジストリと契約先レジストラの案内を確認するのが確かな方法です。
復旧するかどうかの判断材料
費用が高いため、迷うこともあるはずです。次の点を考えると判断しやすくなります。
- そのドメインのメールアドレスを、取引先や各種サービスのログインに使っているか
- 被リンクや検索からの流入、印刷物・名刺への掲載があるか
- ブランド名として他人に取られると困るか
1つでも当てはまるなら、復旧を優先するほうが無難です。開放を待って取り直す方法もありますが、ドロップキャッチの競合に負ければ取り戻せず、その後の交渉や紛争手続きのほうがはるかに負担が大きくなります。
リデンプションに入らないための備え
- 自動更新を有効にし、登録カードの有効期限を管理する
- 更新通知を受け取る連絡先メールを、そのドメイン以外のアドレスにする(期限が切れると自分のドメイン宛ての通知は届かなくなります)
- 重要なドメインは複数年でまとめて更新し、期限をカレンダーにも登録する
- レジストラによっては、有効期限より前に独自の「更新期限」を設けているので、その日付を把握する
まとめ
- リデンプションは、削除処理に入ったドメインを元の登録者が取り戻せる、レジストリ側の猶予期間(gTLD では一般に30日)です
- 期間中はサイトもメールも止まり、移管や通常更新はできず、レジストラを通じた復旧だけが可能です
- 状態は RDAP の
redemption periodなどで確認でき、clientHoldなどの停止状態とは区別が必要です - 復旧は通常の更新より高額になりやすく、レジストラによっては対応しません
- ccTLD や .jp は規則が異なるため、TLD ごとの案内を確認してください