2026年8月13日
2026年8月13日
EV SSL取得の調査方法|証明書がEVかどうかの見分け方と、申請前に確かめる組織情報
EV SSL(Extended Validation、組織の実在を厳格に審査する証明書)を取得するかどうかを決めるには、二つの調査が役に立ちます。一つは、他社や自社の既存サイトの証明書が本当に EV なのかを見分けること、もう一つは、自社の登記情報や電話番号が審査に通る状態になっているかを申請前に確かめることです。この記事では、コマンドとブラウザで EV 証明書を見分ける方法、証明書の発行履歴を調べる方法、そして申請前に確認しておく組織情報を順に説明します。審査が始まってからのドメイン認証や、更新時のつまずきは別記事で扱っているので、ここでは「取得する前の調査」に絞ります。
EV 証明書の現在の位置付け
証明書には、ドメインの管理権限だけを確認する DV、組織の実在も確認する OV、さらに厳格な手順で組織を確認する EV があります。暗号の強さは種類によって変わりません。違うのは、証明書の中に記録される組織情報と、その情報をどこまで確かめたかです。
以前は EV 証明書を使うと、ブラウザのアドレスバーに組織名が緑色で表示されていました。現在の主要なブラウザはこの表示をやめていて、組織名は証明書の詳細画面を開かないと見えません。EV を検討するときは、「訪問者の目に見える効果」より、「証明書に審査済みの組織情報が入ること」や、取引先・社内規程で求められているかどうかを判断の軸にします。
また、証明書の最長有効期間は CA/Browser Forum の決定により段階的に短くなっていて、2026年3月からは 200 日が上限になっています(2026年10月現在)。EV でも同じ上限が適用されるため、更新の手間も含めて検討します。
調査1:サイトの証明書が EV かを見分ける
コマンドで確認する
EV 証明書には、CA/Browser Forum が定めた EV 用のポリシー識別子(OID)2.23.140.1.1 が入っています。OpenSSL で証明書を取り出し、ポリシーと組織情報を表示します。
# 証明書のサブジェクト(組織情報)とポリシーを表示する
openssl s_client -connect example.com:443 -servername example.com </dev/null 2>/dev/null \
| openssl x509 -noout -subject -issuer -dates -ext certificatePolicies
結果の見方は次のとおりです。
- **Policy に
2.23.140.1.1がある**:EV 証明書です。 - **
2.23.140.1.2.2がある**:OV 証明書です。 - **
2.23.140.1.2.1がある**:DV 証明書です。
EV 証明書の subject には、組織名(O)のほかに、businessCategory(法人の種類)、serialNumber(登記上の番号)、jurisdictionC(法人が設立された国)といった項目が入ります。OV や DV にはこれらの項目が入らないので、subject を見るだけでもおおよそ区別できます。
-ext オプションは OpenSSL 1.1.1 以降で使えます。古い環境では、-text を付けて全体を表示し、「Certificate Policies」の部分を探します。-servername を省くと、同じサーバーにある別のサイトの証明書が返ってくることがあるので、省かずに指定します。
ブラウザで確認する
ブラウザでは、アドレスバーの左にある表示(鍵やサイト情報のアイコン)から証明書の詳細を開き、サブジェクトの欄を見ます。組織名、法人の種類、登記番号、設立国が並んでいれば EV です。画面の名前や開き方はブラウザとバージョンによって異なります。
調査2:証明書の発行履歴を調べる
公開されている証明書は、Certificate Transparency(CT)ログに記録されています。crt.sh などの検索サービスでドメイン名を検索すると、過去にどの認証局から、どの種類の証明書が発行されたかを確認できます。
https://crt.sh/?q=example.com
自社のドメインで調べると、次のようなことが分かります。
- 社内の別部署や制作会社が、すでに別の証明書を取っていないか
- 以前 EV や OV を取得していたことがあるか(その場合、認証局に審査済みの情報が残っていることがあります)
- 想定していない認証局から証明書が発行されていないか
あわせて、DNS の CAA レコードも確認します。CAA は、そのドメインに証明書を発行してよい認証局を指定するレコードです。申請予定の認証局が許可されていないと、審査が進んでも発行されません。
dig +short CAA example.com
何も返らない場合は制限がない状態です。値が返る場合は、申請先の認証局が含まれているかを確認します。
調査3:申請前に組織情報を確かめる
EV の審査では、認証局が公的な記録や第三者のデータベースを使って、組織の実在、所在地、電話番号、申請者の権限を確認します。申請内容と記録が食い違うと、審査が止まります。申請前に次の項目をそろえておきます。
法人の正式名称と登記上の情報
申請する組織名は、登記簿上の正式名称と一致させます。「株式会社」の位置、全角と半角、英語表記の有無といった細かな違いでも、確認のやり取りが増えることがあります。国税庁の法人番号公表サイトで、自社の名称・所在地・法人番号がどう登録されているかを確認しておくと、照合の基準が分かります。本店移転や社名変更の直後は、登記や公的なデータベースへの反映を待ってから申請するほうが進めやすくなります。
電話番号が公的な情報源で確認できるか
EV の審査では、組織の電話番号を、認証局が信頼できると判断した情報源で確認し、その番号に電話をかけて申請の意思を確かめることがあります。代表番号が電話帳や企業データベースに載っていない、あるいは古い番号のまま載っている場合は、ここで止まりやすくなります。どの情報源を使うかは認証局によって違うため、申請前に認証局へ確認します。
設立からの期間と事業の実態
設立から間もない組織は、事業の実態を示す追加の書類(銀行口座の確認など)を求められることがあります。条件は認証局の案内で確認します。
社内の担当者と承認者
申請者、承認者、契約に署名する人の役割を決め、その人たちが認証局からの電話やメールに対応できるようにしておきます。担当者が不在で連絡がつかないことは、審査が長引くよくある原因です。
調査4:EV で問題がないかを確かめる
最後に、技術的な条件を確認します。
- ワイルドカードは使えない:EV 証明書は
*.example.comのようなワイルドカードに対応していません。サブドメインが多い場合は、SAN(サブジェクト代替名)に必要な名前を列挙する形になります。 - 自動更新との相性:DV は ACME(Let's Encrypt などが使う自動発行の仕組み)で自動更新できますが、EV は組織の確認が伴うため、更新の流れは認証局のサービスによって異なります。有効期間が短くなるほど更新の回数が増えるので、更新の手順と担当者を決めておきます。
- サーバーへの設置:中間証明書を含めて設置する必要があります。WordPress を置いているサーバーで証明書を入れ替える前には、設定ファイルのバックアップを取り、ステージング環境で確認してから本番に反映します。
まとめ
- EV 証明書は、ポリシー識別子
2.23.140.1.1と、subject のbusinessCategory・serialNumber・jurisdictionCで見分けられます。 - 主要なブラウザはアドレスバーの組織名表示をやめているため、EV の価値は証明書に審査済みの組織情報が入ることや、取引上の要件で判断します。
- CT ログ(crt.sh など)で発行履歴を、
dig CAAで発行を許可された認証局を確認しておきます。 - 申請前に、登記上の正式名称・所在地・公開されている電話番号・承認者の体制をそろえておくと、審査が止まりにくくなります。
- ワイルドカード非対応、短くなる有効期間と更新の手順も、取得前に確認しておきます。