2026年6月5日

2026年6月5日

Google Cloud DNS と ムームーDNS を比較する|Google Cloud でサーバーを動かすときに DNS をどちらに置くか

ムームードメインでドメインを持ち、WordPress を Google Cloud(Compute Engine など)で動かしている、あるいは移す予定がある場合、DNS をムームーDNS に残すか Google Cloud DNS に置くかは「DNS の変更を誰が、どの手段で行うか」で決めるのが現実的です。レコードの変更が少なく、担当者が一人ならムームーDNS のままで足ります。複数人やサービスアカウントで権限を分けたい、構築を gcloud や Terraform で自動化したい、VPC の中だけで使う名前も管理したいなら Cloud DNS が向いています。

この記事では、両者の性格の違いを整理したうえで、Google Cloud にサーバーがあるときに差が出る点、費用と管理責任の考え方、サブドメインだけを Cloud DNS に任せる中間の構成を説明します。サービスの機能や画面は更新されるため(2026年10月現在の情報です)、作業前に公式ドキュメントとヘルプで確認してください。料金の金額は扱いません。

性格の違い

ムームーDNS は、ムームードメインで管理しているドメインに付属する DNS です。コントロールパネルからレコードを入れる形で、ロリポップ!などの連携サービス向けのレコードをまとめて設定する仕組みもあります。ドメインの契約と同じ画面で完結し、日本語のヘルプを見ながら作業できます。

Google Cloud DNS は、Google Cloud のプロジェクトの中に作るマネージドな DNS です。ゾーン(マネージドゾーン)はプロジェクトのリソースとして扱われ、Cloud Console・gcloud コマンド・API・Terraform から操作します。ドメインの登録サービスではないため、ドメインはムームードメインに置いたまま、ネームサーバーを Cloud DNS に向けて使います。

どちらもインターネットにドメインの答えを返す「権威 DNS」です。違いは、操作の手段、権限の分け方、課金と責任の持ち方にあります。

Google Cloud にサーバーがあるときに差が出る点

権限を人とプログラムに分けられる

Cloud DNS の操作権限は IAM で管理します。ゾーンとレコードを管理できるロール(roles/dns.admin)や、参照だけのロール(roles/dns.reader)などを、作業者ごと、サービスアカウントごとに付与できます。操作は Cloud Audit Logs の管理アクティビティとして記録されるので、「いつ誰がレコードを変えたか」を後から追えます。

ムームーDNS はドメインの契約アカウントで操作するため、複数人で作業するとログイン情報を共有する運用になりがちです。担当者が一人なら問題になりにくいものの、外部の制作会社に一時的に作業を頼むような場面では、権限を絞って渡せる Cloud DNS のほうが扱いやすくなります。

構築と同じ手段でレコードを管理できる

サーバーやロードバランサーを gcloud や Terraform で作っているなら、DNS のレコードも同じ手段で管理できます。Terraform では google_dns_managed_zone と google_dns_record_set のリソースでゾーンとレコードを定義でき、サーバーの外部 IP を直接参照させれば、IP の書き写し間違いを防げます。Let's Encrypt の DNS-01 認証についても、Certbot には Cloud DNS 用のプラグイン(certbot-dns-google)があります。

ムームーDNS には一般の利用者向けの公開 API が見当たらないため(2026年10月現在、筆者が確認できた範囲)、レコードの変更は画面での手作業になります。

VPC の中だけで使う名前を持てる

Cloud DNS には、指定した VPC ネットワークからだけ引ける「限定公開ゾーン」があります。データベースサーバーや管理用の内部サービスに db.internal.example.com のような名前を付け、外部には見せずに使えます。ムームーDNS は公開 DNS なので、この用途には使えません。内部の名前を公開 DNS に書くと、構成が外から見えてしまう点にも注意してください。

そのほかの機能

Cloud DNS は DNSSEC に対応しており、加重ラウンドロビンや位置情報による振り分けなどのルーティングポリシーも用意されています(使える条件や対象はゾーンの種類によって異なるため、公式ドキュメントで確認してください)。DNSSEC を使う場合、DS レコードはドメインを登録しているムームードメイン側に登録する必要があります。ムームードメインで DS を登録できるかどうかは、対象の TLD を含めて公式ヘルプで確かめます。

ムームーDNS のままでよい場面

次の条件なら、Cloud DNS に移しても得られるものは少なく、ムームーDNS のままで困ることは少ないでしょう。

  • サーバーは Compute Engine の1台で、外部 IP は静的アドレスとして予約してあり、変わる予定がない。
  • DNS を変えるのはメールの設定や所有権確認の TXT を足すときくらいで、作業者は一人。
  • 証明書は Web サーバーでの認証(HTTP-01)で取得しており、ワイルドカード証明書を使っていない。

サーバーの外部 IP を「エフェメラル(一時的)」のまま使っていると、インスタンスの停止と起動で IP が変わり、DNS の A レコードと食い違うことがあります。どちらの DNS を使う場合も、WordPress を公開するサーバーの IP は静的アドレスとして予約しておきます。

費用と管理責任の考え方

ムームーDNS はドメインの契約に付属して提供されています。Cloud DNS は、ゾーンの数と問い合わせの量に応じて課金される従量制で、請求はプロジェクトに紐づく請求先アカウントに来ます。個人のサイトなら大きな額にはなりにくいものの、無料の DNS から移ると「毎月の請求が発生する」「請求先アカウントの支払いが止まるとサービスに影響する」という性質が加わります。

もう一つ注意したいのが、ゾーンがプロジェクトに属することです。検証用のプロジェクトに本番のゾーンを作ってしまい、後でプロジェクトごと削除すると、本番の DNS も一緒に使えなくなります。本番のゾーンは削除しない前提のプロジェクトに置き、プロジェクトの削除や請求先の変更ができる人を絞っておきます。移行直後と大きな変更の後には、ゾーンを書き出して保管しておくと復元に使えます。

# ゾーンのレコードを BIND 形式で書き出して保管する
gcloud dns record-sets export example.com.zone \
  --zone=example-com --zone-file-format

中間の構成:サブドメインだけ Cloud DNS に任せる

ドメイン全体を移すほどではないが、Google Cloud 上の検証環境やサービス用の名前は gcloud で管理したい、という場合は、サブドメインだけを Cloud DNS に委任する方法があります。example.com 本体のレコード(サイトとメール)はムームーDNS に残るため、影響の範囲を小さく保てます。

# サブドメイン用の公開ゾーンを作る
gcloud dns managed-zones create gcp-example-com \
  --dns-name="gcp.example.com." \
  --description="delegated from muumuu dns" \
  --visibility=public

# 割り当てられたネームサーバー名を確認する(ns-cloud- で始まる名前が並ぶ)
gcloud dns managed-zones describe gcp-example-com \
  --format="value(nameServers)"

# サブドメインの下にレコードを作る
gcloud dns record-sets create app.gcp.example.com. \
  --zone=gcp-example-com --type=A --ttl=300 --rrdatas=203.0.113.20

次に、ムームーDNS 側で、名前を gcp、種別を NS として、確認したネームサーバー名を登録します。ムームーDNS の画面で NS レコードを入力できるかどうかは、作業時点の画面とヘルプで確認してください。入力できない場合、この構成はとれないので、ドメイン全体を移すかどうかを検討します。

# 委任が効いているか確認する
dig +short gcp.example.com NS
dig +trace app.gcp.example.com A

ドメイン全体を Cloud DNS へ移す場合

全体を移すと決めたら、ムームーDNS のレコードをすべて書き出し、Cloud DNS にゾーンを作って登録し、Cloud DNS のネームサーバーへ直接問い合わせて照合してから、ムームードメインでネームサーバーを変更します。ムームーDNS の連携サービス向けの設定で自動的に入っていたレコードは、ネームサーバーを変えると使われなくなるので、dig で実際の答えを引いて漏れを確かめます。切り替え後しばらくはムームーDNS の設定を残し、戻せる状態にしておきます。具体的な手順は下の関連記事で説明しています。

まとめ

  • どちらも権威 DNS です。違いは、操作の手段、権限の分け方、課金と責任の持ち方にあります。
  • Cloud DNS は IAM による権限の分離と操作の記録、gcloud・Terraform での管理、限定公開ゾーンが使え、Google Cloud でサーバーを運用するときに相性が良い構成です。
  • 作業者が一人で変更が少なく、サーバーの IP が固定ならムームーDNS のままで足ります。
  • Cloud DNS は従量課金でゾーンがプロジェクトに属するため、本番のゾーンを置くプロジェクトと、削除できる人を管理します。
  • 全体を移す前に、サブドメインだけを Cloud DNS に委任して試す方法もあります。

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