2026年6月16日

2026年6月16日

JP-DRP の監視手順|紛らわしい .jp ドメインを早く見つける仕組みづくり

JP-DRP(JPドメイン名紛争処理方針)による申立ては、紛らわしい .jp ドメインを見つけてから使う手段です。見つけるのが遅れるほど、なりすましの被害は広がり、相手のサイトに使用実績が積み上がって判断も難しくなります。この記事では、監視対象の一覧の作り方、WHOIS と DNS を使った定期確認の自動化、証明書の発行記録の確認、見つけたときの記録と判断の流れまでを、手順として説明します。申立ての書き方そのものは別の記事で扱うため、ここでは「早く見つけて、申立てに使える形で記録する」ことに絞ります。

監視の全体像

.jp ドメインの監視は、次の3つの情報源を組み合わせて行います。

  • WHOIS: 登録の有無、登録日、状態の変化を確認します。JPRS の WHOIS が一次情報です。
  • DNS: ネームサーバーや Web、メールの設定が入ったかを確認します。設定が入ると、実際に使われ始めた可能性があります。
  • 証明書の発行記録(Certificate Transparency): HTTPS の証明書が発行されると、ドメイン名が公開ログに記録されます。サイトの公開準備を早い段階で察知できます。

どれか一つでは見落としが出ます。WHOIS だけでは使われ始めたかが分からず、証明書の記録だけでは証明書を使わないサイトを見逃します。

手順1: 監視対象の一覧を作る

まず、守りたい名称を決めます。社名、主要な商品名・サービス名、略称、ローマ字表記などです。次に、それぞれについて紛らわしい文字列を書き出します。

  • ハイフンの有無(example-shop と exampleshop)
  • よくある打ち間違い、似た文字の置き換え(l と 1、o と 0 など)
  • 「official」「shop」「login」「support」などの語を付けたもの
  • 汎用JP(.jp)、属性型(co.jp など)、都道府県型の違い

手作業で書き出すと漏れが出るため、つづりの変化を自動で生成するツールを補助に使う方法もあります。オープンソースの dnstwist は、元のドメインから変化形を作り、DNS で応答があるものを一覧にできます。オプションは版によって変わることがあるため、ヘルプで確認してから使ってください。

# 変化形を生成し、DNS で応答があったものだけを CSV で出力する
dnstwist --registered --format csv example.jp > candidates.csv

ツールの結果は候補の一覧として使い、その中から監視を続ける対象を人が選びます。生成される数が多いため、すべてを毎回確認するより、被害が想定されるものに絞るほうが続けやすくなります。

手順2: WHOIS の変化を定期的に確認する

一覧のドメインについて JPRS の WHOIS を定期的に取得し、前回との差分を見ます。未登録だったものが登録された、登録者や状態が変わった、といった変化を拾えます。以下は、結果をファイルに保存して差分を表示する例です。

#!/bin/sh
# 監視対象の .jp ドメインを watchlist.txt に1行1つずつ書いておく
# 実行するたびに WHOIS の結果を保存し、前回から変わったものだけを表示する
set -eu
DIR="$HOME/jp-watch"
mkdir -p "$DIR/prev" "$DIR/curr"

while read -r d; do
  [ -z "$d" ] && continue
  whois -h whois.jprs.jp "$d/e" < /dev/null > "$DIR/curr/$d.txt" 2>&1 || true
  if [ -f "$DIR/prev/$d.txt" ] && ! diff -q "$DIR/prev/$d.txt" "$DIR/curr/$d.txt" > /dev/null; then
    echo "== $(date '+%Y-%m-%d %H:%M') 変化あり: $d"
    diff "$DIR/prev/$d.txt" "$DIR/curr/$d.txt" || true
  fi
  cp "$DIR/curr/$d.txt" "$DIR/prev/$d.txt"
  sleep 5   # 問い合わせの間隔をあける
done < "$DIR/watchlist.txt"

週に一度などの頻度で cron から実行し、出力をログに残します。

# 毎週月曜 9時に実行し、結果を追記する(crontab -e で登録)
0 9 * * 1 /bin/sh "$HOME/jp-watch/watch.sh" >> "$HOME/jp-watch/watch.log" 2>&1

WHOIS は短時間に大量の問い合わせをすると、利用を制限されることがあります。対象を絞り、間隔をあけて実行してください。また、出力に毎回変わる行が含まれる場合は、その行を除いてから比較しないと、変化が無くても差分が出続けます。初回の実行結果を見て調整します。

手順3: DNS と証明書の記録を確認する

登録されたドメインが実際に使われ始めたかは、DNS の設定から推測できます。

# ネームサーバー、Web、メールの設定を確認する
dig +short NS example-shop.jp
dig +short A example-shop.jp
dig +short MX example-shop.jp

MX が設定されていれば、そのドメインでメールを送受信できる状態です。自社を名乗ったフィッシングメールに使われる可能性もあるため、優先して確認します。

証明書の発行記録は、Certificate Transparency のログを検索できる crt.sh などで確認できます。自社の名称を含むドメインに新しい証明書が発行されていれば、サイトの公開が近い可能性があります。

# 名称を含むドメインの証明書の記録を検索し、ドメイン名だけを取り出す(jq が必要)
curl -s "https://crt.sh/?q=%25example%25&output=json" | jq -r '.[].name_value' | sort -u

外部の検索サービスは、混雑して応答しないことや仕様が変わることがあります(2026年10月現在)。結果が返らないときは時間をおいて再実行し、監視が止まっていないかもログで確認します。

手順4: 見つけたら記録してから判断する

変化を見つけたら、相手に連絡したり通報したりする前に、その時点の状態を記録します。JP-DRP の申立てでは、登録日や使用の状況を書面で示す必要があり、後から相手がサイトを変えると示しにくくなるためです。

  • WHOIS の結果(登録日、状態、登録者の表示)を取得日時とともに保存する
  • サイトの画面を、URL と日時が分かる形で保存する
  • 自社の商品名や画像の使用、公式を装った表示、売却の持ち掛けなど、不正の目的を示しそうな事実をメモする

記録が済んだら、状況に応じて対応を選びます。フィッシングや偽の通販サイトなど被害が出ているものは、ホスティング事業者や指定事業者の窓口、フィッシングの報告窓口への通報を優先します。使われていないものや、正当な事業の可能性があるものは、監視を続けながら、交渉や申立ての必要性を検討します。

監視を続けるための運用

監視は、続けられる仕組みになっているかが大切です。

  • 担当者と頻度を決める: 誰がいつログを見るかを決め、異動のときは引き継ぎます。
  • 一覧を見直す: 新商品の発表や名称の変更に合わせて、監視対象を追加します。
  • 自社のドメインも対象にする: 自社で持つドメインの有効期限や状態も同じ仕組みで確認すると、更新漏れや不正な変更にも気付けます。
  • 裁定の傾向を知る: 日本知的財産仲裁センターは JP-DRP の裁定を公開しています。似た事案でどう判断されたかを読んでおくと、見つけたときに申立てを検討すべきかの見当が付けやすくなります。

監視の結果、申立てを検討する段階になったら、集めた記録をそろえて、ドメイン紛争に詳しい弁理士や弁護士に相談すると判断が早くなります。

まとめ

  • 監視は WHOIS、DNS、証明書の発行記録を組み合わせて行います。
  • 監視対象は、名称の変化形を書き出し、ツールの結果も参考にしながら、被害が想定されるものに絞ります。
  • JPRS の WHOIS を定期的に取得して差分を見る仕組みを作り、問い合わせの頻度は控えめにします。
  • 変化を見つけたら、連絡や通報の前に日時付きで記録し、被害の有無で対応を選びます。
  • 担当者、頻度、一覧の見直しを決めて、監視を止めずに続けます。

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