2026年7月15日
2026年7月15日
Vanity NS(独自ネームサーバー名)の設定ガイド|初めて導入するときの準備と手順
Vanity NSは、DNS事業者のネームサーバーに自社ドメインの名前(例: ns1.example-brand.com)を付けて使う仕組みで、「名前を置くドメインのゾーンにA/AAAAレコードを作る」「その名前をレジストラでホスト(グルー)として登録する」「対象のドメインのNSを新しい名前に変える」の3段階で導入できます。この記事では、これから初めてVanity NSを導入する人向けに、導入前に決めること、設定の手順、確認方法、運用で気をつける点を説明します。すでに使っているVanity NSを変更する手順は、別記事で扱っています。
Vanity NSを使う理由と向かないケース
Vanity NSを使うと、管理しているドメインのNSに自社の名前が表示されます。ホスティング事業者や制作会社が、顧客に提供するDNSを自社のサービスとして見せたいときによく使われます。将来DNS事業者を替えても、名前を変えずに裏のIPだけを替えられる余地がある点も利点です。
一方で、名前を置くドメインの管理と、グルーの登録・更新という作業が増えます。管理するドメインが少ない場合や、DNS事業者の標準のネームサーバー名で困っていない場合は、導入しないほうが運用は単純です。
導入前に決めること
名前を置くドメイン
Vanity NSの名前は、自社が管理するドメインの配下に作ります。Webサイトで使っている主ドメインを使う方法と、ネームサーバー専用のドメインを別に用意する方法があります。主ドメインの更新を忘れると、そのドメインのNSを使っている顧客のドメインまで名前解決ができなくなるため、どちらの場合も自動更新とレジストラロックを有効にします。
DNS事業者がVanity NSに対応しているか
Vanity NSには、DNS事業者の協力が必要な部分があります。
- ネームサーバーのIPアドレスが、アカウントごとに固定されているか(事業者によっては、ゾーンごとに割り当てるネームサーバーが変わります)
- ゾーンの頂点のNSレコードとSOAを、Vanity NSの名前に書き換えられるか
Cloudflareのカスタムネームサーバーのように、機能として提供している事業者もありますが、上位のプランに限られることが多く、対象の範囲や手順はプランと時期で変わります(2026年10月現在)。まず使っているDNS事業者の手順書で、対応の有無と条件を確認してください。自前のBINDやPowerDNSで運用している場合は、こうした制約はなく、自分で設定できます。
台数とIPv6
ネームサーバーは2台以上を用意し、可能なら異なるネットワークに置きます。DNS事業者のネームサーバーがIPv6にも対応しているなら、Vanity NSでもAAAAレコードとIPv6のグルーを登録します。IPv4だけにすると、事業者の標準のネームサーバーより冗長性が下がることになります。
設定の手順
ここでは、example-brand.com の配下に ns1 と ns2 を作り、顧客のドメイン customer.com で使う例で説明します。IPアドレスは説明用の値です。
1. 事業者のネームサーバーのIPアドレスを調べる
今使っている事業者のネームサーバー名から、IPアドレスを確認します。
dig +short ns-a.dns-provider.example A
dig +short ns-a.dns-provider.example AAAA
dig +short ns-b.dns-provider.example A
dig +short ns-b.dns-provider.example AAAA
事業者がVanity NS用のIPを別に案内している場合は、その値を使います。
2. 名前のゾーンにA/AAAAレコードを作る
example-brand.com のゾーンに、Vanity NSの名前のレコードを追加します。
ns1.example-brand.com. 3600 IN A 192.0.2.53
ns1.example-brand.com. 3600 IN AAAA 2001:db8::53
ns2.example-brand.com. 3600 IN A 198.51.100.53
ns2.example-brand.com. 3600 IN AAAA 2001:db8:1::53
3. レジストラでホスト(グルー)を登録する
example-brand.com を管理しているレジストラで、ns1.example-brand.com と ns2.example-brand.com をネームサーバーのホストとして登録し、手順2と同じIPアドレスを入力します。画面の名称は「ネームサーバーのホスト名登録」「子ネームサーバー」「グルーレコード」などレジストラによって異なります。
この登録が必要なのは、ネームサーバーの名前が属するドメインのレジストリに、その名前のIPを知らせるためです。登録しないと、レジストラの画面でその名前をNSとして指定できなかったり、名前を引くために同じゾーンを引く循環が起きたりします。グルーのIPとゾーン内のA/AAAAの値は、同じにそろえます。
4. 対象のドメインのゾーンを準備する
customer.com のゾーンで、頂点のNSレコードをVanity NSの名前に変えます。SOAの1つ目の値(プライマリのサーバー名)も、必要に応じてVanity NSの名前にします。マネージドDNSでは、この書き換えが事業者の機能として行われる場合があります。
切り替える前に、Vanity NSのIPに直接問い合わせて、ゾーンが返ることを確かめます。
dig +norec @192.0.2.53 customer.com SOA
dig +norec @192.0.2.53 customer.com NS
応答の flags に aa が含まれ、NSにVanity NSの名前が並んでいれば準備完了です。
5. 対象のドメインのNSを切り替える
customer.com のレジストラで、ネームサーバーを ns1.example-brand.com と ns2.example-brand.com に変更します。最初は影響の小さいドメインで試し、問題がないことを確認してから他のドメインに広げます。
設定後の確認
# 親ゾーンのグルー(.com の例)
dig +norec @a.gtld-servers.net ns1.example-brand.com A
# 顧客のドメインの委任
dig +norec @a.gtld-servers.net customer.com NS
# 委任から順にたどれるか
dig +trace customer.com
親ゾーンの委任には親ゾーン側のTTL(多くのgTLDで1〜2日程度)が付くため、切り替え直後は古いNSを使う利用者が残ります。その間も、元のネームサーバー名でゾーンが応答する状態を保ちます。DNSVizなどの診断ツールで、委任とゾーン内のNSが一致しているかを見るのも有効です。
DNSSECを使っている場合
Vanity NSに切り替えても、署名の鍵が変わらなければDSレコードは変える必要がありません。ただし、DNS事業者自体を替える場合は鍵が変わるのが一般的で、DSの差し替えが別途必要になります。切り替え前に、事業者の手順書でDNSSECの扱いを確認してください。
運用で気をつけること
- DNS事業者がネームサーバーのIPを変える場合、グルーとA/AAAAの更新は自分で行う必要があります。事業者からのお知らせを受け取れるようにしておきます
- 名前を置くドメインは、全顧客のDNSの土台です。更新切れや乗っ取りを防ぐため、自動更新、レジストラロック、アカウントの2段階認証を設定します
- 設定した値(名前、IP、登録したレジストラ)を文書に残し、担当者が変わっても分かるようにします
まとめ
- Vanity NSは、事業者のネームサーバーに自社ドメインの名前を付ける仕組み
- 導入前に、事業者の対応状況、名前を置くドメイン、IPv6の有無を確認する
- 名前のゾーンにA/AAAAを作り、レジストラでグルーを同じ値で登録する
- Vanity NSのIPに直接問い合わせてゾーンが返ることを確かめてから、NSを切り替える
- 名前を置くドメインは全顧客の土台なので、更新とアカウントの保護を徹底する