2026年7月24日
2026年7月24日
DNS over HTTPS(DoH)の設定方法|ブラウザ・Windows・Linuxでの有効化と確認
DNS over HTTPS(DoH)は、DNS の問い合わせを HTTPS で暗号化して送る仕組みです。ブラウザなら設定画面で「セキュア DNS」を有効にし、使う DNS サービスを選ぶだけで使い始められます。この記事では、DoH で守れるものと守れないもの、Firefox・Chrome・Windows 11・Linux での設定手順、実際に DoH で問い合わせているかの確認方法、社内ネットワークなどで起きやすい問題を解説します。
DoHで守れるもの・守れないもの
通常の DNS 問い合わせは、UDP の53番ポートを暗号化なしで流れます。同じネットワークにいる人や経路の途中の機器から、どのサイトの名前を調べたかが見え、応答を書き換えられる余地もあります。DoH(RFC 8484)は、この問い合わせを HTTPS(通常は443番ポート)の通信に乗せることで、利用者と DNS サービスの間を暗号化します。
一方で、次の点は DoH では変わりません。
- DNS サービスの運営者には問い合わせ内容が見える:暗号化されるのは途中の経路だけです。どの事業者に問い合わせを任せるかが重要になり、各サービスのプライバシーポリシーを読んで選ぶ必要があります
- 接続先のサイトはほかの情報からも分かる:接続先の IP アドレスや、TLS 接続の最初に送られるホスト名(SNI)は、別の仕組み(Encrypted Client Hello など)がなければ見えます
- DNS の答えそのものが正しいかの保証ではない:DoH は「DNS サービスとの通信」を守るもので、権威 DNS の情報が改ざんされていないかを検証するのは DNSSEC の役割です
似た仕組みに DNS over TLS(DoT、853番ポート)があります。役割はほぼ同じで、DoT は専用ポートを使うためネットワーク管理者から識別しやすく、DoH は通常の HTTPS と区別しにくい、という違いがあります。
DoHに対応した主なDNSサービス
代表的な公開 DNS サービスの DoH の接続先(テンプレート URL)は次のとおりです(2026年10月現在)。
- Cloudflare(1.1.1.1):
https://cloudflare-dns.com/dns-query - Google Public DNS(8.8.8.8):
https://dns.google/dns-query - Quad9(9.9.9.9):
https://dns.quad9.net/dns-query
マルウェア配布サイトのブロックや、保護者向けのフィルタリングを行う別の接続先を用意しているサービスもあります。URL や提供内容は変わることがあるため、各サービスの公式ページで確認してから設定してください。
ブラウザで設定する
ブラウザの設定は、そのブラウザの通信だけに効きます。ほかのアプリや OS 全体には影響しません。設定画面の項目名はバージョンによって変わるので、見つからないときは設定画面の検索欄で「DNS」と入力すると探しやすくなります。
Firefox
設定の「プライバシーとセキュリティ」に DNS over HTTPS の項目があり、保護の強さを段階で選べます。標準の段階では、ネットワーク側が DoH を無効にするよう求めている場合や、DoH で名前解決に失敗した場合に通常の DNS へ戻ります。最も強い段階を選ぶと、DoH が使えないときに通常の DNS へ戻らなくなるため、より安全な一方で、社内の名前が引けないなどの問題が起きやすくなります。DNS サービスは一覧から選ぶか、URL を直接入力して指定します。
Chrome・Edge
Chrome は設定の「プライバシーとセキュリティ」→「セキュリティ」に「セキュア DNS を使用する」があります。既定では、OS に設定されている DNS サービスが DoH に対応していれば自動で切り替える動作です。特定のサービスを使いたい場合は、一覧から選ぶか、カスタムとして URL を入力します。Edge も同様の項目を持っています。会社や学校で管理されている端末では、管理者のポリシーによってこの設定が変更できないことがあります。
Windows 11で設定する
Windows 11 では、OS の DNS 設定として DoH を使えます。こちらはブラウザ以外のアプリにも効きます。
- 「設定」→「ネットワークとインターネット」から、使っている接続(Wi-Fi またはイーサネット)を開く
- 「DNS サーバーの割り当て」の編集を選び、手動に切り替える
- IPv4(必要なら IPv6)の DNS サーバーに、DoH 対応サービスの IP アドレス(例:1.1.1.1)を入力する
- DNS over HTTPS の項目をオンにし、テンプレートを自動にするか、上記の URL を入力する
Windows は代表的なサービスの IP アドレスと DoH の URL の組み合わせをあらかじめ知っており、自動で使えることがあります。一覧にないサービスは、管理者権限のコマンドで登録します。
netsh dns add encryption server=1.1.1.1 dohtemplate=https://cloudflare-dns.com/dns-query
netsh dns show encryption
画面の表記や手順は Windows の更新で変わることがあります。設定後に名前解決ができなくなった場合は、DNS サーバーの割り当てを自動(DHCP)に戻せば元の状態に戻ります。
Linuxサーバーで使う場合
Linux では、多くのディストリビューションで使われている systemd-resolved が DoT に対応していますが、DoH には対応していません(2026年10月現在)。サーバー用途で経路を暗号化したいだけなら、DoT を使う方が手軽です。
# /etc/systemd/resolved.conf.d/dot.conf
[Resolve]
DNS=1.1.1.1#cloudflare-dns.com 9.9.9.9#dns.quad9.net
DNSOverTLS=yes
sudo systemctl restart systemd-resolved で反映し、resolvectl status で設定を確認します。DNSOverTLS=yes は DoT が使えないと名前解決に失敗するため、まずは opportunistic で試し、問題がなければ yes にする進め方もあります。
DoH を使いたい場合は、dnscrypt-proxy のような、ローカルで通常の DNS を受けて DoH に変換するソフトウェアを入れ、OS の DNS の向き先をそのソフトウェアにします。ただし、データセンター内の DNS を使う方が速く安定していることも多く、WordPress を動かすサーバーで DoH が必要になる場面は多くありません。導入する場合はステージング環境で試し、更新やプラグインのダウンロードなど外部への通信が問題なく動くかを確認してください。
DoHで問い合わせているか確認する
curl は DoH の接続先を指定して名前解決できます。
# DoH で名前解決してからアクセスする
curl --doh-url https://dns.google/dns-query -I https://example.com/
# JSON 形式で答えを見る(Google Public DNS の例)
curl -s "https://dns.google/resolve?name=example.com&type=A"
ブラウザの設定が効いているかは、Cloudflare を使っている場合は https://1.1.1.1/help を開くと、DoH を使っているかどうかが表示されます。Firefox では about:networking#dns を開くと、名前解決の一覧に DoH(TRR)を使ったかどうかの列があります。
よくある問題
社内のサーバー名やイントラネットが開けない:社内専用の名前は社内の DNS にしか登録されていません。ブラウザや OS が外部の DoH サービスを直接使うと、こうした名前が引けなくなります。社内では社内 DNS を使い、DoH は管理者の方針に合わせて設定します。
公衆 Wi-Fi のログイン画面が出ない:ホテルや駅の Wi-Fi は、DNS を使ってログイン画面に誘導することがあります。いったん DoH を無効にするか、通常の DNS へ戻る設定にしてからログインします。
フィルタリングが効かない:家庭や学校の DNS フィルタリングは、DoH を使うと迂回されることがあります。Firefox は、ネットワーク側が特定のドメイン(use-application-dns.net)で合図を出すと、自動の DoH を無効にする仕組みを持っています。
まとめ
- DoH は DNS の問い合わせを HTTPS で暗号化し、経路上での盗み見や改ざんを防ぐ
- DNS サービスの運営者には問い合わせ内容が見えるため、信頼できる事業者を選ぶ
- ブラウザの設定はそのブラウザだけに、Windows 11 の設定は OS 全体に効く
- Linux サーバーでは systemd-resolved の DoT の方が手軽で、DoH は変換ソフトウェアが要る
- 社内 DNS・公衆 Wi-Fi・フィルタリングとの相性を確認し、問題があれば通常の DNS に戻せるようにしておく