2026年7月23日
2026年7月23日
TMCHの商標クレーム通知を回避するには|通知が出る仕組みと、名前を変えるか登録を進めるかの判断
新しい gTLD でドメインを申し込んだとき、「商標クレーム通知(Trademark Claims Notice)」が表示されることがあります。これは、申し込もうとしている名前が TMCH(Trademark Clearinghouse、商標クリアリングハウス)に登録された商標と一致したことを知らせるものです。結論から言うと、通知そのものを技術的にすり抜ける方法を探すより、「その名前を使ってよいか」を判断し、問題がありそうなら名前を変えるのが、後の紛争を防ぐうえで最も現実的な回避策です。この記事では、通知が出る仕組み、通知が出たときの確認手順、登録を進める場合の注意点を、ドメインを登録する側の立場で説明します。
TMCH とは何か
TMCH は、ICANN が新 gTLD プログラムに合わせて設けた、商標情報のデータベースです。商標の権利者が自分の登録商標を TMCH に登録しておくと、新しい TLD が始まるときに次の二つの仕組みを使えるようになります。
- Sunrise(サンライズ):一般の受付が始まる前に、商標権者が優先して登録できる期間です。
- Trademark Claims(商標クレーム):一般の受付が始まった後の一定期間(少なくとも90日)、商標と一致する名前を誰かが申し込もうとすると、申込者に通知を表示し、登録された場合は商標権者にも知らせる仕組みです。
この記事のテーマである「クレーム通知」は後者です。通知は登録を止めるものではなく、「この名前には商標の権利者がいます」と申込者に知らせ、確認したうえで進めるかどうかを選ばせるものです。
通知が出る条件
通知が出るのは、主に次の条件がそろったときです。
- 申し込む TLD が新 gTLD で、クレーム期間中である
- 申し込む名前(ドメインの「.」より左の部分)が、TMCH に登録された商標の文字列と一致する
一致の判定は、商標の文字をドメインで使える形に置き換えたうえで行われます。たとえば、商標に含まれる空白や一部の記号は、取り除くかハイフンに置き換えた形で比べられます。つまり、通知の対象は「商標と同じ文字列」であり、似ているだけの名前には通常は出ません。
一方で、.com や .jp のような従来からある TLD や、受付開始から長く経った TLD では、クレーム期間が終わっているため通知は出ません。ただし、TMCH には商標権者向けに、クレーム期間の後も登録を知らせ続けるサービスがあります。通知が出なかったからといって、商標権者に気付かれないわけではない点に注意してください。
「回避」をどう考えるか
通知を避けたいと考える理由は、多くの場合次のどちらかです。
- 一般的な言葉を使いたいだけなのに、通知が出て不安になった
- ブランド名に近い名前を、通知を出さずに取りたい
前者は、名前を変えなくても問題ないことがあります。商標は、登録された商品やサービスの範囲で権利が及ぶものです。たとえば、ある言葉が別の業種で商標登録されていても、まったく別の分野で一般的な意味として使うなら、紛争になりにくい場合があります。
後者は避けるべきです。文字を一つ足す、ハイフンを入れるなどして通知の対象から外れても、商標権者のブランドに便乗する目的で登録・使用すれば、UDRP(統一ドメイン名紛争処理方針)や、新 gTLD 向けの URS(迅速な一時停止の手続き)の対象になり得ます。通知が出なかったことは、権利の侵害がないことの証明にはなりません。
通知が出たときの確認手順
手順1:通知の内容を読む
通知には、一致した商標の名称、権利者、登録された国、対象となる商品・サービスの区分などが記載されます。内容をそのまま閉じずに、画面を保存するかメモしておきます。表示の形式はレジストラによって異なります。
手順2:商標の範囲と自分の用途を比べる
通知に出た商標が、どの商品・サービスについて登録されているかを確認します。日本の商標なら特許庁の J-PlatPat、海外の商標なら各国の特許庁や WIPO のデータベースで調べられます。次の点を書き出すと判断しやすくなります。
- 自分のサイトで扱う商品・サービスは、商標の区分と重なるか
- その言葉は、自分の業界で一般的な意味として使われているか
- サイトの見た目や説明が、商標権者と関係があるように見えないか
手順3:迷ったら名前を変えるか、専門家に相談する
用途が重なる、あるいは判断がつかない場合は、名前を変えるのが最も手堅い選択です。事業の名前として長く使う予定がある場合や、すでに商品名として使っている場合は、弁理士や弁護士に相談してから決めます。
登録を進める場合の注意点
確認の結果、問題ないと判断して登録を進める場合は、次の点を押さえておきます。
- 通知に同意した記録が残る:申込者は通知を確認したうえで登録したことになります。後で紛争になった場合、「知らなかった」という主張は通りにくくなります。
- 商標権者に登録が伝わる:登録が完了すると、商標権者に通知が送られます。問い合わせが来る可能性を想定しておきます。
- 使い方で誤解を招かない:ロゴや配色を似せない、商標権者の商品を扱っているように見せない、といった配慮をします。
- 登録者情報を正確にする:紛争の連絡は登録者情報に基づいて届きます。連絡が届かないまま手続きが進むと、反論の機会を失います。
商標権者の側から見た「回避」
自社のブランド名を他人に取られるのを避けたい場合は、TMCH に商標を登録し、新しい TLD の Sunrise で優先登録する方法があります。一部のレジストリは、商標と一致する名前の登録をまとめて止めるブロックのサービスも提供していますが、対象となる TLD や条件はサービスごとに異なります。
ICANN は新 gTLD の次の募集を進めており(2026年10月現在)、今後、新しい TLD が順次始まると、そのたびに Sunrise とクレーム期間が設けられる見込みです。商標の保護の仕組みは見直しの議論も続いているため、最新の条件は ICANN と TMCH の公式情報で確認してください。
まとめ
- TMCH のクレーム通知は、申し込む名前が登録商標と一致したことを知らせるもので、登録を止めるものではありません。
- 通知が出るのは、新 gTLD のクレーム期間中に、商標と同じ文字列を申し込んだときです。期間が終わっても、商標権者には別の形で知らされることがあります。
- 文字を変えて通知をすり抜けても、ブランドへの便乗は UDRP や URS の対象になり得ます。
- 通知が出たら内容を記録し、商標の区分と自分の用途を比べ、迷ったら名前を変えるか専門家に相談します。
- 登録を進める場合は、誤解を招かない使い方と正確な登録者情報を心がけます。