2026年9月16日

2026年9月16日

WordPressで自治体・公共機関のサイトを構築する方法|情報設計・アクセシビリティ・運用体制

自治体や公共機関のサイトをWordPressで作るときは、デザインより先に「住民が手続き情報にたどり着ける情報設計」「アクセシビリティ対応」「複数部署で安全に更新できる権限と運用」の3つを決めることが成功の分かれ目になります。この記事では、ページ構成とカスタム投稿タイプの設計、テーマの選び方、必要な機能の実現方法、権限・更新・バックアップの運用、公開前のチェックリストまでを管理画面の操作中心に解説します。調達条件やセキュリティポリシーは団体ごとに異なるため、最終的な判断は所管部署の規程に従ってください。

公共サイトの訪問者が求めていること

公共サイトに来る人の多くは、目的がはっきりしています。「転入届に何が必要か」「ごみの収集日はいつか」「窓口は何時まで開いているか」といった具体的な答えを、できるだけ少ない操作で知りたいと考えています。

そのため、トップページで組織の紹介を長く見せるより、次の導線を目立たせるほうが役に立ちます。

  • サイト内検索と、よく見られている手続きへのリンク
  • 「引っ越し」「出産」「子育て」「介護」などのライフイベント別の入口
  • 窓口の場所・受付時間・電話番号
  • 災害や休日窓口などの緊急・臨時のお知らせ

また、高齢の方、視覚に障害のある方、スマートフォンだけで閲覧する方、日本語を母語としない方など、利用者の幅が広いのも公共サイトの特徴です。後述するアクセシビリティ対応は「追加の機能」ではなく、設計の前提として扱います。

情報設計:ページ・投稿タイプ・分類を分ける

WordPressの標準機能だけでも構築はできますが、情報の種類ごとに入れ物を分けておくと、検索や一覧表示、担当部署ごとの管理がしやすくなります。

  • 固定ページ: 組織案内、施設案内、サイトの使い方、アクセシビリティ方針、プライバシーポリシーなど、内容があまり変わらないもの
  • 投稿: 新着情報・お知らせ。カテゴリーで「くらし」「健康・福祉」「防災」などに分ける
  • カスタム投稿タイプ「手続き」: 必要書類・受付窓口・手数料の有無などを毎回同じ形式で載せるもの
  • カスタム分類「ライフイベント」: 手続きを「引っ越し」「結婚」「出産」などで横断的に探せるようにする

カスタム投稿タイプは、プラグイン「Custom Post Type UI」を使えば管理画面から作れます。コードで管理したい場合は、テーマではなく独自プラグイン(wp-content/plugins/ に置く小さなPHPファイル)に書くと、テーマを変更しても投稿タイプが消えません。

<?php
/**
 * Plugin Name: 手続き投稿タイプ
 */
add_action( 'init', function () {
    register_post_type( 'procedure', array(
        'labels'       => array(
            'name'          => '手続き',
            'singular_name' => '手続き',
        ),
        'public'       => true,
        'has_archive'  => true,
        'show_in_rest' => true,
        'menu_icon'    => 'dashicons-clipboard',
        'supports'     => array( 'title', 'editor', 'excerpt', 'revisions' ),
        'rewrite'      => array( 'slug' => 'procedure' ),
    ) );

    register_taxonomy( 'life_event', 'procedure', array(
        'labels'            => array( 'name' => 'ライフイベント' ),
        'hierarchical'      => true,
        'show_in_rest'      => true,
        'show_admin_column' => true,
        'rewrite'           => array( 'slug' => 'life-event' ),
    ) );
} );

show_in_rest を有効にしないとブロックエディターで編集できない点がつまずきやすいところです。有効化したあとは「設定」→「パーマリンク」を開いて「変更を保存」を押し、URLのルールを更新してください。新しいURLが404になる場合は、まずここを確認します。

URLは公開後に変えると外部からのリンクが切れるため、最初に英数字のスラッグ規則(例: /procedure/tennyu/)を決めておきます。

テーマの選び方

公共サイトのテーマは、見た目の華やかさよりも次の点で選びます。

  • 見出し・ランドマーク(header、nav、main、footer)が正しくマークアップされている
  • キーボードだけで全メニューを操作でき、フォーカス位置が見える
  • 文字と背景のコントラストを確保しやすい配色に変更できる
  • 文字サイズを大きくしてもレイアウトが崩れない
  • 更新が続いており、不要な機能(スライダーやアニメーション)を外せる

WordPress.orgのテーマディレクトリでは「アクセシビリティ対応」の機能タグで絞り込めます。ただしタグは出発点にすぎないため、候補のテーマで実際にキーボード操作と読み上げを試してから決めてください。WordPress標準のブロックテーマ(Twenty Twenty-Five など)を土台にし、「外観」→「エディター」で配色や文字サイズを調整する方法も、余計な機能が少なく扱いやすい選択肢です。

アクセシビリティ対応

日本の公共サイトでは、ウェブアクセシビリティの規格としてJIS X 8341-3が参照されるのが一般的で、広く使われている版は(2026年10月現在)JIS X 8341-3:2016です。これは国際的なガイドラインWCAG 2.0と同等の内容で、適合レベルAAを目標にする団体が多く見られます。W3Cからはその後WCAG 2.1(2018年)とWCAG 2.2(2023年)が勧告されているため、新しく作るサイトではこれらの達成基準も参考にすると安心です。総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」も、方針の策定や試験の進め方の参考になります。規格の版や団体として求められる水準は改定されることがあるので、着手前に最新情報を確認してください。

WordPressで作業するときに押さえたい点は次のとおりです。

  • 画像ブロックの「代替テキスト」を入力する。装飾目的の画像は空欄にする
  • 見出しは h2→h3 の順に使い、文字を大きくする目的で見出しを使わない
  • リンク文字は「こちら」ではなく「転入届の様式(PDF)」のように行き先がわかる表現にする
  • PDFだけで情報を出さず、主な内容はHTMLのページにも書く
  • 表は見出しセルを設定し、レイアウト目的で表を使わない
  • 動画には字幕を付ける

確認には、ブラウザ拡張の axe DevTools や WAVE、Chrome の Lighthouse などの自動チェックが使えます。ただし自動チェックで見つかるのは問題の一部なので、キーボード操作とスクリーンリーダー(Windowsの NVDA、iPhoneの VoiceOver など)での確認も組み合わせます。試験結果と方針は「アクセシビリティ方針」ページとして公開しておくのが一般的です。

多言語対応が必要な場合は Polylang や WPML などの多言語プラグインで翻訳ページを持つ方法と、機械翻訳サービスを案内する方法があります。機械翻訳は誤訳の可能性があるため、防災や手続きの重要な情報は人が確認した翻訳を用意することを検討してください。

必要な機能と実現方法

  • サイト内検索: 標準の検索は投稿タイプをまたいで探せますが、精度に不満があれば検索系プラグインの導入を検討します
  • お問い合わせフォーム: Contact Form 7 や WPForms で作成し、送信内容に個人情報が含まれるためSSL(HTTPS)を前提にします。フォームにはスパム対策を入れ、保存期間を決めておきます
  • 施設の地図: Googleマップで場所を開き「共有」→「地図を埋め込む」で取得したHTMLを「カスタムHTML」ブロックに貼ります。地図だけでは読み上げで伝わらないため、住所と最寄り駅を文字でも書きます
  • 緊急情報の表示: 災害時はアクセスが集中するため、トップページ上部に告知を出せる仕組みと、画像の少ない軽量な緊急ページを用意しておきます

運用:権限・更新・バックアップ・セキュリティ

公共サイトは複数の部署が更新するため、権限の設計が重要です。WordPressの標準の権限グループは「管理者」「編集者」「投稿者」「寄稿者」「購読者」の5つです。各課の担当者は「寄稿者」として下書きまでを書き、広報担当の「編集者」が確認して公開する、という承認の流れにすると誤掲載を減らせます。「管理者」はテーマやプラグインを変更できるため、ごく少数に限ります。

あわせて次の運用を決めておきます。

  • 更新: WordPress本体・テーマ・プラグインの更新は、検証環境で動作を確かめてから本番に反映する手順にする
  • バックアップ: UpdraftPlus などのプラグインやサーバー側の機能で、データベースとファイルを定期的に別の場所へ保存し、復元手順を実際に試しておく
  • ログイン保護: 推測されにくいパスワードと二要素認証(Two Factor プラグインなど)を使い、可能なら管理画面へのアクセス元IPを制限する
  • プラグインの数: 使うプラグインは必要なものに絞り、更新が止まったものは置き換える

調達やセキュリティについては、総務省の「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」や各団体の規程、クラウドサービスを使う場合の評価制度(ISMAPなど)が関係することがあります。WordPressを採用できるかどうか、どのサーバーやクラウドを使えるかは団体ごとの規程と調達条件で決まるため、情報システム部門と早めに相談してください。公開側の攻撃面を小さくしたい場合は、Simply Static などで静的なHTMLを書き出して公開し、WordPress本体は内部からしかアクセスできない場所に置く構成も選択肢になります。

公開前チェックリスト

  • 主要な手続きページがトップから3クリック程度でたどれる
  • すべての画像に適切な代替テキストがある(装飾画像は空欄)
  • キーボードだけでメニュー・フォーム・検索を操作できる
  • 文字のコントラストと拡大表示を確認した
  • アクセシビリティ方針・プライバシーポリシー・サイトの使い方を公開した
  • 権限グループごとに担当者のアカウントを作り、不要なアカウントを削除した
  • バックアップの取得と復元を一度試した
  • 旧サイトからのURL変更がある場合は301リダイレクトを設定した
  • 緊急情報の掲載手順を担当者間で確認した

まとめ

  • 公共サイトは「住民が手続き情報に早くたどり着けること」を最優先に、ライフイベント別の入口と検索を目立たせる
  • 手続きはカスタム投稿タイプ、横断的な分類はカスタム分類にすると、管理と表示が整理しやすい
  • アクセシビリティはJIS X 8341-3とWCAGを参考に設計段階から組み込み、自動チェックと人の確認を併用する
  • 寄稿者→編集者の承認の流れ、検証してからの更新、復元を試したバックアップで運用を固める
  • 調達やセキュリティの条件は団体の規程で決まるため、情報システム部門と早めに調整する

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