2026年9月13日
2026年9月13日
WordPressの複数サイトを効率よく管理するツールの選び方|一元管理ダッシュボードとWP-CLI
複数のWordPressサイトをまとめて管理するには、MainWPやManageWPのような一元管理ダッシュボードを使う方法と、WP-CLIのエイリアスでコマンドから一括操作する方法の2つが中心になります。これに死活監視とバックアップの仕組みを組み合わせると、数十サイト規模でも更新漏れや障害の見落としを減らせます。この記事では、ツールの種類と選び方、導入時の注意点を、クライアントサイトを保守する制作会社やフリーランスの立場で解説します。
「複数サイト管理」と「マルチサイト」は別物
最初に用語を整理します。WordPressの「マルチサイト」は、1つのWordPressの中に複数のサイトを作るコアの機能で、データベースとプラグインを共有します。一方、この記事で扱う「複数サイト管理ツール」は、別々のサーバーにある独立したWordPressを、外から一括で操作する仕組みです。
クライアントごとにサーバーや契約が分かれている場合、マルチサイトにまとめることは通常できませんし、1つの不具合が全サイトに波及する点でも向きません。独立したサイトを束ねて管理するなら、この記事のツールが対象になります。マルチサイト自体の管理方法を比べたい場合は別の検討になります。
管理ツールで何を一括化できるか
一元管理ツールで効率化できる作業は、おおむね次のとおりです。
- 更新: 本体・プラグイン・テーマの更新状況を一覧し、まとめて適用する
- バックアップ: 各サイトのバックアップの実行状況を確認する、または取得する
- 監視: サイトが表示されているか(死活監視)や、表示速度の変化を見る
- セキュリティ: 既知の脆弱性があるプラグインの検出や、マルウェアスキャンの結果を確認する
- レポート: 適用した更新や監視の結果を、クライアント向けの報告書にまとめる
- ログイン: 各サイトの管理画面に、ダッシュボードからワンクリックで入る
どのツールも、各サイトに接続用のプラグインを入れ、そのプラグインを通じて管理側から操作する仕組みが一般的です。
主な選択肢
一元管理ダッシュボード
代表的なのは次の2つで、仕組みが大きく異なります。
- MainWP: 管理用ダッシュボード自体がWordPressのプラグインで、自分で用意したWordPressに入れて使うセルフホスト型です。管理されるサイトには「MainWP Child」プラグインを入れます。データを自社の管理下に置けるのが特徴です。
- ManageWP: GoDaddyが運営するクラウドサービス(SaaS)で、管理画面はWeb上で提供されます。管理されるサイトには「ManageWP Worker」プラグインを入れます。サーバーを用意せずに始められます。
このほかにも、セルフホスト型のInfiniteWPや、クラウド型のWP Umbrellaなどがあります。2つの代表的なツールの違いは MainWPとManageWPの比較 で詳しく比較しています。
WP-CLIによる一括操作
SSHで接続できるサーバーであれば、WP-CLIのエイリアス機能で複数サイトをまとめて操作できます。管理用プラグインを各サイトに追加しなくて済むため、プラグインを増やしたくない案件や、技術者が少数で運用している場合に向いています。
ホスティング会社の管理機能
同じホスティング会社にサイトを集めている場合、サーバーの管理画面に複数のWordPressの一覧表示や自動更新、バックアップの機能が用意されていることがあります。提供内容は会社ごとに違い、変更もあるため、契約中のサーバーの説明を確認してください(2026年10月現在)。
WP-CLIのエイリアスで一括操作する
WP-CLIでは、設定ファイルにSSHの接続先を書いておくと、@名前 を付けてリモートのサイトにコマンドを送れます。個人の設定として使う場合は ~/.wp-cli/config.yml に次のように書きます。
@client-a:
ssh: deploy@client-a.example.com/var/www/html
@client-b:
ssh: deploy@client-b.example.com:2222/home/deploy/public_html
@clients:
- @client-a
- @client-b
@clients のように、エイリアスを並べたグループも定義できます。グループを指定すると、含まれるサイトに順番にコマンドが実行されます。
# 各サイトの更新が必要なプラグインを確認する
wp @clients plugin list --update=available
# 更新対象を確認してから、1サイトずつ更新する
wp @client-a plugin update --all --dry-run
wp @client-a plugin update --all
前提として、接続先のサーバーにもWP-CLIが入っている必要があります。また、SSH鍵での接続が設定されていないとパスワード入力で止まります。一括で更新まで流すと、不具合が複数サイトで同時に起きるおそれがあるため、確認はグループで、更新はサイトごとにバックアップを取ってから行うのが安全です。
選ぶときの判断基準
ツール選びは、機能の多さよりも次の観点で比べると判断しやすくなります。
- 管理画面をどこに置くか: 自社サーバーで持つか、クラウドサービスに任せるか。セルフホスト型は管理画面の保守も自社の仕事になります。
- データの置き場所: サイトの情報やバックアップがどこに保存されるか。クライアントとの契約や社内規程で、外部サービスへの預け入れに制限がないかを確認します。
- 費用の増え方: サイト数に応じて増える料金体系か、機能ごとの拡張を買う形か。料金や無料で使える範囲は変わるため、導入時点の公式情報で比べます。
- 必要な機能の範囲: 更新だけでよいのか、バックアップ・監視・レポートまで1つにまとめたいのか。
- サーバー環境との相性: 接続用プラグインがサーバーのセキュリティ設定(WAFなど)で止められないか。数サイトで試験運用してから全体に広げると、相性の問題を早めに見つけられます。
監視とバックアップは別に確保する
一元管理ツールが止まったり、接続用プラグインが不具合を起こしたりすると、そのツールに頼っていた監視やバックアップも同時に止まります。死活監視は外部のサービスでも二重に見ておくと安心です。監視の考え方は クライアントサイトの死活監視の設定方法 で解説しています。バックアップも、ツールの機能とは別に、サーバー側やホスティング会社の仕組みで取得しておくと、どちらかが失敗しても復元できます。
管理ツール自体のセキュリティ
一元管理ツールは、全クライアントのサイトに管理者として入れる「合鍵」を持っている状態です。管理ツールのアカウントやダッシュボードが乗っ取られると、全サイトが同時に被害を受けます。
- 管理ツールのログインには2段階認証を設定する
- セルフホスト型のダッシュボードは、クライアントサイトとは別のWordPressに入れ、管理画面へのアクセスをIPアドレスやBasic認証で制限する
- スタッフごとにアカウントを分け、退職時にすぐ無効化できるようにする
- 接続用プラグインも通常のプラグインと同じく、更新を後回しにしない
- 契約が終わったサイトからは接続用プラグインを削除し、管理対象から外す
まとめ
- 複数サイト管理ツールは、独立したWordPressを外から束ねる仕組みで、コアの「マルチサイト」とは別物です。
- 主な選択肢は、MainWP(セルフホスト型)やManageWP(クラウド型)などの一元管理ダッシュボード、WP-CLIのエイリアス、ホスティング会社の管理機能です。
- 選ぶときは、管理画面の置き場所、データの保存先、費用の増え方、必要な機能、サーバーとの相性で比べます。
- 管理ツールは全サイトの合鍵になるため、2段階認証やアクセス制限で守り、監視とバックアップは別の手段でも確保します。